Shin's COLUMUN on WEB
HBJ編集長イケダシンによるハーレーもろもろその他暮らしのブログ
メイドイン中華、再考
2014/08/13

ザックス・マダスというオートバイ。10年ほど前にデビューしたこいつを初めて見たのはその年のモーターサイクルショーだった。

 

ドイツのザックス社が中国で生産するオートバイ。50と125があって、新車は26万ほどで売られている。エンジンは中華カブ、ホンダのフルコピー。ちなみにサックス社は現在四輪のサスペンションメーカーであり、メーカーOEMからレース用までを網羅する大メーカーだ。

 

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うわっ、かっこイイとひとめぼれ。以来まったく忘れていたが、1年ほど前ヤフオクをうろうろチェックしていて実に久々その姿を見かけたのだった。しかも28000円。

まさか落ちないだろうと30000円で入札、すると競合相手もおらず、28000円のまま落札。衝動買い、とはまさにこのことだ。しかも夜中に自宅で。

 

2万円ほど送料を払って数日後に運ばれてきたこいつはだいぶくたびれてはいたものの、ま、十分許容範囲でこんなもんだろうと一安心。そしてガソリンを入れてキックを踏んでみると……ポロポロポロッとエンジンがかかったのだ。横の原チャリからナンバーを外してそのまま天麩羅で試走。うーん、悪くない。スポーティーな外観と裏腹、エンジンはまさにカブそのものの鈍足だが、足回りは意外にもよろしい様子。送料込みで5万ほどとして納得できるお買い物。スズキ初代ウルフ50を友人に貸出しチョイノリをフェイスブック友達にあげて、サックスは双子のおむつやら銀行やらコンビニやらと大活躍の一台となった。

ちなみに車名はカタカナでは“マダス”だが、スペルはMadAss、マッドはキチガイ、アスといえばロバ、あるいはアスホールでおなじみケツ。ヨーロッパなら“キチガイろば”だがアメリカでは“狂ったケツの穴”である。ドイツ人、意外にファンキー。

 

……言うても中華だし。

ぶっちゃけ思ってました。しかもヤフオク。最悪カブのエンジン見つけて乗せ換えればいいだろう位なつもりで。がしかし。新オーナーの思いとは裏腹にザックスは何のトラブルもなく、春夏秋冬朝昼晩といつもキック一発で目覚め、買い出しや用足しのアシをほぼ100%忠実にこなしておりまして。唯一のトラブルは燃料コックからガソリンが漏れて交換したくらい。いやはやメイドイン中華、悪くないゾ。

 

して昨日、オイルを“交換”しようと重い腰を上げた。恥ずかしながら打ち明けるが、実は購入以来一度も交換どころかレベルチェックさえしたことがない。バイク乗り失格。

で、しばらくエンジンを温めてドレンを外すと……タラーとわずかに廃油がたれた。なぬっ? マシンを直立させるともう少しだけ出たが、その量100ccといったところか。中華云々以前に自らの行いを恥じよ、と我ながら恥ずかしくなった。と同時に。

カブは“おちょこ一杯オイルが入っていれば1万キロ走る”といわれるバイクである。ハタチの頃に初めてバラしたエンジンもカブ。ハーレーなみにチューニングパーツが豊富なこのエンジンが俺は大好きなのだが、中華フルコピーにも(これが法的人道的ににいかがなものかはさておき)その性能が受け継がれていることを図らずも実証し、基本設計のすばらしさに感銘した次第。そしてメイドイン中華でもこんな製品が作れるんだと驚いた。

 

我が家のザックスはマニアが大切に扱った車両ではなく、一般的な原チャリ扱いを受けてきたことは一目瞭然。年式不明ながらリアブレーキがメカニカルディスク(現行は油圧)だから最初期型、おそらく10年近く前。立派なものだ。ジャーマン・クオリティと言っても過言ではない。

メイドイン中華のすべてが悪いわけではない。当たり前だが、すべての中国の食品工場の作業者たちが淡唾を吐き散らしながら働いているわけではない(と信じたい)。事実ドイツの企業であるザックスは中国工場でこうしたバイクを作っている。中国製のドイツ品質。要はいかに生産管理をするかがすべてということなのだろう。

 

ちなみにこのバイク、実にほら、かっこいいでショ。実はデザインはかのハンス・ムート。スズキカタナをデザインした人。さすがです。

 

にしても、中国産食品はでき得る限り避けたいが。

 

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Profile

池田 伸

Shin Ikeda

1962年、長野生まれ。
作家/旅人/バイク乗り。
「ホットバイクジャパン」「旅学」「ヴァージンハーレー」編集人。著書にオートバイの旅を綴った「路上へ」(河出書房新社)、シルバー&革職人高橋ゴローのライフストーリー「イエローイーグル」(A-works)、窪塚洋介とエジプトを旅した「放浪」(NORTH VILLAGE)他。

www.facebook.com/shinikeda8